不登校の我が子と接する中で、先が見通せない不安を感じることはないでしょうか。
この道しるべ7ステップについて個人差はありますが、概ねこのようなプロセスを歩んでいくことが多いのです。
まず、一番大切な1ステップから3ステップをご紹介します。
このような道しるべを理解し、どのような対応をすればいいか把握しておくだけでも、保護者さまの精神的な不安が少しは緩和されることと思います。
【第1ステップ:不登校開始期】
この時期は、完全不登校になる前の期間で、親は、あの手この手を使って学校へ行かせようとしますが、2週間に1回、1週間に1回、3日に1回、3日間続けて休んで1日行く、というように少しずつ休みの日が増えていく時期になります。
お子さまも頭では「行かなければならない」と思いつつ、実際は頭が痛くなった、お腹が痛くなった、身体が重く動けない、という症状を訴えてきて学校を休むという行動を繰り返します。
この時、親は思いもよらぬお子さまの状況を受け止めきれず、ひどい言動をお子さまに向けて行ったり、無理に学校に行かせたりすることが多いのです。いろいろステップを踏むことで、「あの時、あんなことを言わなきゃよかった。こんなことをしなければよかった」と後悔に駆られる保護者さまが多いのです。
〝休みたい〟ということは何かが子どもの中で起きているということです。
ご家庭での取り組みとして、母親的役割は、まず観察することです。そして、休む時の共通点を探してみてください。曜日、時間割、行事の前後なのか、あるいはランダムなのか、また交友関係に変化があるかも注意深く観察してください。また携帯を生活から遠ざけようとしているかも確認してください。遠ざけようとしている場合、嫌がらせ的なことが起きていると考えられます。様子を見ながら学校の先生、スクールカウンセラー、民間のカウンセラーに相談するとよいでしょう。早期対応という観点からもお勧めします。
父親的役割は、客観的に見守ってあげてください。もし、学校に行けなくても否定したり、叱ったりしないでください。また、力づくで、無理やり学校に連れていかないことです。そして、一番大事なのは、「お前の育て方が悪い」「お前が甘やかすからだ」などと、母親を責めないでください。
この保護者さまの初動の言動が、お子さまの心を深く傷つけて、後々かえって長引かせることになるのです。
まずは、落ち着いて、お子さまの心に寄り添ってあげてください。
【第2ステップ:悩み苦しむ時期】
その次に悩み苦しむ時期がやってきます。もちろん悩み苦しむ時期は最初から続いているのですが、この時期が一番苦悶する時期になります。
またこの時期はその苦しみが外に現れて来る時でもあります。多いケースとしては暴れる、暴言を吐く、非行行為をするなどです。クラスメートが来てくれた後に暴れたりするのもこの時期です。暴れたり怒鳴ったりすることで感情を発散しているので、発散した後はとてもおとなしくなる場合が多いです。
家庭での取り組みとして、母親的役割は、ケースバイケースですが、親として本気で子どもにぶつからなければいけない面もあると思います。しかし、自分に向かって暴力をふるってきた場合や物にあたって暴れているときは避難してください。
この時期は子ども本人も苦しいのですが、それ以上に母親の逃げ場がなくなることの方が問題です。子どもの一番近くにいて支える存在である母親自身が自分をどんどん追い込んでいき余裕がなくなってしまいます。特に母親が専業主婦で家にいる場合など、母親自身が心身ともに疲弊してしまいます。この時、母親自身が避難することがとても重要です。避難できる場所を二箇所ぐらいぜひ確保してください。これは保身の意味もありますが、むしろそれ以上に母親の心の安定を図るためと思っていただいたほうがいいでしょう。
ただ、お子さまが少し落ち着かれたときには、片づけは本人にさせるか、または一緒に片づけるようにしましょう。
父親的役割は、母親を労うことが重要な役割だと思います。そして、子どもが母親に向かって暴れたときは、子どもを止めるようにしてください。
しかし、父親に向かってきたときは、本気でぶつかることも必要な場合もあります。なお、暴れ方がひどいときは、家族を連れて避難するようにしましょう。
必ず、この時期を乗り越えられる時が来ます。それまでは、保護者さまが、うつ状態にならないように、ぜひ愚痴を言える相手、避難場所を確保してください。もちろん友人・知人、いない場合はカウンセラーに相談されることもお勧めします。
【第3ステップ:エネルギー補充期】
この時期は、先の第2ステップと全く違って、何もしたくないといった状態でただただ寝ているという時期が訪れます。
よく保護者さまの方が「よくあれだけ眠れるな」「一日中寝ているんです」と困り果てて相談に来られる時期です。外側から見たら、寝ているだけ、怠けているだけ、のように見えますが、実はお子さまの中で枯渇したエネルギーを補充している時といえます。みなさんも疲れたとき、一日の疲れを取るために夜寝ますよね。普段でしたら一晩寝るだけで回復しますが、ずっとがんばってきた子にはそれだけではまったく足りません。彼らは予備のエネルギーまで使い果たしてしまっている状態です。周りから見て驚くぐらいこの時期は寝ます。
心配だと思いますが、周囲の人間は無理やり起こすのではなく、「こんなになるまでうちの子はがんばってきたんだな」と見守ってください。そして、この子にはそこまでがんばれる力があるのだと思えるようになっていただけたらと思います。
それから起きていても何もしたくないと言って一日中ボーっとしている子もいますが、これも怠けではありません。エネルギー切れで動きたくても動けない状態なだけで、そのような時はいろんなものへの興味も持てなくなります。入浴回数も減ってくるのもこの時期です。入浴という行動は、実はとてもエネルギーのいる行動です。お風呂に入りはじめたら少し回復してきたという合図になります。
また部屋を真っ暗な状態にしてこもるのもこの時期です。カーテンをきっちり閉め昼間でも絶対に開けない、部屋の中に更にテントのようなものを作る、本棚などを使って入り口付近にバリケードを作るというようなことをするのもこの時期です。
お子さまのこの行動を理解していただくために、一度自宅で押入れ、戸棚、大きなダンボール箱などに入いる体験をしてみてください。保護者のみなさんの反応は「意外に落ち着きますね」というものでした。体験して初めてお子さまの気持ちや行動がわかったとおっしゃっていました。狭くて暗い場所というのは『母親の子宮』をあらわしています。そこは子どもたちにとって一番安心できる場所です。そういう場所を自ら作り、その中で充電しているわけです。注意点:閉所恐怖症の方はやらないでください。
家庭での取り組みとして、母親的役割は、心配だと思いますし、部屋の匂いや衛生管理もとても気になると思いますが、無理やり起こさないようにしましょう。
ただ、食事等の世話などは通常通りする行
い、支度ができたら本人が食べても食べなくても、返事がなくても普通に声をかけるよう心掛けてください。
父親的役割は、お子さまのテリトリー、例えば、部屋などには入らず、ドアの外から「おはよう」「おやすみ」等の声をかけてあげましょう。この声掛けがとても大切です。その際、返事がないのが当たり前ととらえてください。
けれど、いつも気にかけてくれているという、お父さまの心は、お子さまに伝わっているはずです。
Comments