不登校の道しるべ 7ステップ(1~3ステップ)をご覧になられていない方は、前回にご紹介していますので、先にそのブログをご覧ください。
【第4ステップ:エネルギー再活性期】
第3ステップを過ぎると、何かしたくなるエネルギー活性期がやってきます。前述のお風呂に入りはじめた、ゲームをし始めた、などの行動が見られるようになったら次の段階に入ったと思ったらよいでしょう。昼夜逆転という状況もこの時期に入ったサインです。
不登校や引きこもり初期の時は、枯渇したエネルギー(元気さ)を回復する時期なので、特に何かをさせる必要はありません。
エネルギー補充期が終了した最初の段階では、家でできる何か決まった事がよく、無理のないもの、簡単にできることが適しています。例えば、食事の支度(後片付け)を手伝う、洗濯物をとりこむなど家の中での役割をひとつ決めそれを実行する、というようなものです。それを順に増やしていくとよいでしょう。注意点として、決めたことに対しては責任を持ってやらせる、安易に親がやってしまわない、ことがあげられます。親が変わりにやってしまうと最終的にやらなくなってしまいます。これもよい機会ととらえ、自分も家族の一員として責任があることを教えていきましょう。
「家事の分担」など当たり前すぎたり、簡単すぎたりと思うかもしれませんが、「やらなければいけない」ことを「毎日やる」ことが義務的なことに対応する力を育むこと、努力することの練習になります。そして簡単だからこそ努力が報われる体験や達成感を得やすいという利点があります。もうひとつの利点として、親から信頼され当てにされた嬉しさと家にいる申し訳なさの軽減です。
その時の注意点として、必ずやったこと・結果をほめてください。服のたたみ方が雑、やり方が違うなど、プロセスについて注意する方がいますが、まずプロセスよりそれをやったことを承認することが重要です。その次に直してほしいところを伝えます。そのときも「ありがとう、とても助かったよ。この次にやるときはここをこういうふうにしてくれるともっとよくなるよ。」と伝えてあげてください。決して「あなたのやり方はよくない」という否定することはしないようにしてください。
昼夜逆転について少し述べておきます。昼夜逆転というのは文字通り生活リズムが逆転していることですが、朝方に寝付くということがポイントです。朝というのは人が活動を開始する時間です。不登校の子にとっては一日の中で一番苦しい時間です。他の人たちが普通にしていることを自分はできないということをイヤでも意識しなければならないからです。それを避ける方法として一番いいのは寝てしまうことというわけです。それが繰り返されてリズムが崩れてくるという仕組みです。また夜というのは家中寝静まります。親とも顔を合わせなくて済むので、気が楽だということも関係しています。
子どもというのは何かやりたいことが見つかったら、昼夜逆転生活は自ら戻していこう努力し始めます。ですから信頼してあげてください。
家庭での取り組みとして、母親的役割は、毎日できる仕事、例えば家事などを選択させてください。そして、やったことは承認し、ほめることが重要です。やっていなくてもすぐに手を出さないようにしましょう。
昼夜逆転の場合、朝一度は起きるように声をかけ、たとえ起きなくても声かけは3回までなどと決めておきましょう。
父親的役割は、家で子どもと一緒にできること、例えば、ゲーム、将棋、料理、ジョギング等のスポーツ、日曜大工等、お子さまを誘ってあげてください。また、お父さまがわからないものは子さまに教えてもらってください。この時もやったことを承認し、ほめてあげましょう。
【第5ステップ:再活動希望期】
この時期に入ってきますと、子どもの口から「ひまだ、ひまだ」という言葉が出てきます。「こんな状態なら学校へ行った方がマシかもしれない」という発言もみられます。半分は冗談かもしれませんが、半分は本気です。親としてとても嬉しいでしょう。中には、では明日から、来週の月曜日から学校へ行きましょうと早々に段取りをする方もおられますが、ここで焦るのは禁物です。大切なことは、子どもの目が外へ向いてきたこと、今の状態から脱したいと思っているという気持ちに焦点を当てることです。「そんなにひまなら何かやってみる?」「久しぶりに○○さんに連絡してみる?」「アルバイトでもしてみる?」「ボランティアを募集していたからやって
みる?」「またテニス始める?」など興味のあることを探す手伝いをしながら、外の世界につなげていくとよいでしょう。
学習面の不安についての発言あったら、塾や家庭教師という方法がある、いつからでも始められる、と保護者さまとしてバックアップ体制が出来ていることを示すとよいでしょう。
保護者さまとしては焦る気持ちもあると思いますが、外の世界に気持ちが向き始めて興味を持ち始めたのだなと捉え、学校に戻ることも
選択肢の一つとしてお子さまに話してあげるとよいでしょう。
学校へ復帰する場合は、学校側の受け入れ準備もありますから、先生と連絡を取りながら進めることが望ましいです。
家庭での取り組みとして、母親的役割は、外の世界に目を向けられるように、何か具体的に提案する受け入れ体制について担任の先生(学校)と話し合いましょう。また、学習支援について、学校や行政機関等を利用して相談をしてください
父親的役割は、お父さまと一緒に趣味や買い物などに外出しようと声をかけてください。また、機会をみて、アルバイトや学校などを促してみるのもいいでしょう。
【第6ステップ:リハビリ期】
この時期は再び活動を開始する時期といえるでしょう。学校へまた通いだしたり、新しくアルバイトを始めたりなど目に見える活動を再開し
ますので、お子さまの気持ちもかなり楽になり、保護者さまホッと安心する時です。
ここで注意していただきたいことがあります。それは、アルバイトなどは週に2、3回のペースでスタートするので問題はありません。しかし学校の場合は、「毎日行くのが当たり前」という前提が保護者さまの中にあるので、次のような錯覚をしてしまう可能性が大いにあります。
それは「学校へ行き始めることが出来るようになった = もう大丈夫、毎日行く事ができる」、と錯覚してしまうことです。母親から
「せっかく行き始めたのにまた休みました。どうしましょう・・・」という相談をいただくのもこの頃です。保護者さまとしては当然なのですが、つい期待してしまいます。その期待が錯覚を生み出しているといえます。それまで学校を休んでいたのですから、友人関係やクラスの雰囲気、学習面の不安などを感じるのは当然のことです。自分で行くと決めているのですが、いざ行動におこそうと思ったら、かなり勇気のいることです。
そのような錯覚を起こしたときの解消方法をひとつお伝えします。自分が大ケガをしたと想像してください。そのときは十分休養して、よくなってから活動開始しますね。でも最初から全快で再スタートする人はいないと思います。必ずリハビリしながら段階を踏んで慣らしていくはずです。不登校や引きこもりの子も同じです。欠席や遅刻早退をしながら復帰していきます。
家庭での取り組みとして、母親的役割は、学校に復帰しつつあるお子さまに「疲れたら休んでいいよ」という感覚で関わることをお勧めします。また、早退遅刻欠席をしても責めないようにしてください。今はリハビリ中であることを心にとめ、お子さまが動きやすいようにと先回りをせず、本人のペースを大事にしてあげてください。
父親的役割は、このステップになるとお父さまの存在はとても重要です。子どもにできるだけ関わるようにして、休日にはスポーツ観戦、スポーツ、アウトドア的活動、買い物など、積極的に外に連れ出しましょう。
中長期休暇には、お子さまと一緒に自然環境の中に外出するのもいいと思います。
【第7ステップ:完全登校社会復帰期】
この段階に入って、安定して学校へ通えるようになります。進路変更をして新しい生活を始める方もいます。どちらにも共通しているのは安定して生活ができるようになったということです。
ここまで来るのにかかる時間は○年ですとは残念ながら言うことができません。本当に人により様々です。わたしが出会った子で本当に早い子は3ヶ月、長い場合8年間という時間が必要だった子もいました。
復帰するのに早い方がいいと思いがちですが、時間の長さより質の方が重要です。ここで時間がかかったとしても、自分自身と向き合っておくとその後の人生で問題が発生しても乗り越える力がついています。
逆にとにかく学校に行ってくれたらいいと、無理をかけるとその後小さな問題や似たようなことが起きた時、また休みがちになる可能性があります。
今は進路選択も多様化しておりますので、焦らず親子ともどもじっくりとこの不登校・引きこもりという状況に取り組んでほしいと思います。その際、周囲の目や声に巻き込まれる可能性もありますので、専門家(カウンセラー)に相談しながら進めていくことをお勧めします。
ここまで読まれて気づいた方もおられると思いますが、このプロセスは子どもの誕生から保育園や幼稚園、小学校へ入るまでのプロセスと同じようなプロセスをたどります。つまり不登校というのは、再誕生と成長のプロセスともいえます。
一般的に子どもから大人になる時期というのは、出会ったある女の子の言葉を借りると「自分がバラバラになってしまいそう」な時期です。それほど不安定な時期ということは、外界からの少しの刺激にも過敏に反応してしまう子もいるということです。もう一度自分というものや自分の価値観を確認したくなる子もいます。そしてそれはとても時間がかかることです。一度そのような視点からお子さまを見てあげてください。
家庭での取り組みとして、母親的役割・父親的役割は、このステップまできたら当たり前のことはほめず、努力したことなど、結果ではなく行動そのものをほめてあげてください。
もうここまでのステップまで来ると、ほぼ安心できるでしょう。
お子さまが自分の力で漕ぎ出そうとしています。自己実現にできるよう見守ってあげてください。
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